年金の繰り下げ受給は何歳から得?損益分岐点と注意点を解説

年金を繰り下げると毎月の受給額は増えますが、その間は年金を受け取れません。「結局、何歳まで生きれば得なの?」という疑問に、受取総額の計算例で答えます。

繰り下げ受給の基本と増額率

みらい犬

年金を待てば増えるのは魅力だけど、待っている間の生活費も気になるワン。まずは仕組みを整理したいワン。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則65歳から受け取れます。受け取り開始を66歳以降に遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶと、65歳からの繰り下げ待機期間に応じて、年金額が1カ月につき0.7%増えます。増額率は生涯変わりません。

2026年10月22日時点で、原則として受け取り開始は75歳まで遅らせられ、最大増額率は84%です。ただし、昭和27年4月1日以前生まれの方など、繰り下げ上限が70歳となる対象者もいます。自分に適用される上限は日本年金機構で確認してください。

受け取り開始の例65歳からの増額率65歳で年120万円の場合の年額
65歳0%120万円
70歳42%170万4,000円
75歳84%220万8,000円

表は65歳時点の年額が変わらないと仮定した、増額率を理解するための単純計算です。実際の年金額には改定などがあり、対象にならない加算もあります。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げを選べます。

損益分岐点は何歳?受取総額で比較

みらい犬

月額だけを見ると繰り下げがお得に見えるワン。でも、受け取らなかった分を取り戻す年齢も知っておきたいワン。

損益分岐点は、繰り下げ後の受取累計額が、65歳から受け取った場合の累計額を追い越す時点です。以下は税金や社会保険料を引く前の額面を比べた目安です。

70歳開始なら、およそ82歳になるころ

みらい犬

70歳までの5年間を受け取らない分は、意外と大きいワン。増えた年額で何年かけて取り戻すかを考えるワン。

65歳から年120万円を受け取る場合と比べます。70歳まで待つと、65〜69歳の5年間で受け取らない額は600万円です。一方、70歳からの年額は170万4,000円となり、65歳開始との差は年50万4,000円です。

600万円÷50万4,000円=約11.9年。70歳から約11年11カ月で累計が並ぶため、82歳になる少し前が逆転の目安です。年単位で見ると、82歳ごろと覚えておくとわかりやすいでしょう。

75歳開始なら、およそ87歳になるころ

みらい犬

75歳開始は年額が大きく増える一方、10年間待つことになるワン。額面の逆転年齢だけで決めないようにするワン。

75歳まで待つ間に受け取らない額は、120万円×10年=1,200万円。75歳からの年額は220万8,000円で、差額は年100万8,000円です。1,200万円÷100万8,000円=約11.9年となり、こちらは87歳になる少し前が目安です。

この計算では、70歳開始も75歳開始も「開始後、約11年11カ月」で65歳開始の累計に追いつきます。ただし、亡くなる年齢は予測できません。損益分岐点は受け取り方を考える材料の一つであり、「その年齢まで生きれば必ず手元のお金が多い」という意味ではありません。

額面の逆転年齢だけで決められない理由

みらい犬

僕は老後の手取りや、年金を待つ間の家計も心配だワン。数字の前提を確かめてから考えたいワン。
  • 税金・社会保険料:年金額が増えると、所得税・住民税や介護保険料、医療保険料などの負担が変わる場合があります。手取りで見た逆転年齢は、額面の試算と異なることがあります。
  • 加給年金額・振替加算:これらは繰り下げによる増額の対象外です。加給年金額は繰り下げ待機中に受け取れないため、対象となる配偶者や子がいる方は特に確認しましょう。
  • 働いている間の年金:老齢厚生年金には在職老齢年金による支給停止の仕組みがあり、停止された額は繰り下げ増額の対象になりません。就労収入がある方の実際の増額額は、単純な掛け算と異なる場合があります。
  • 待機中の生活費:繰り下げ期間の支出を給与や預貯金などで賄えるかが重要です。生活費を補うために資産を大きく取り崩す場合、その影響も含めて考えましょう。

老齢基礎年金だけを繰り下げ、老齢厚生年金は65歳から受け取るといった選択も可能です。ただし、ほかの年金を受ける権利が生じた場合など、繰り下げに制限がかかることもあります。個別の受給条件は年金事務所で確認すると安心です。

自分の場合を考える3つの手順

みらい犬

平均的な例だけでは、僕の家計に合うかはわからないワン。年金見込額と毎月の支出を並べてみるワン。
  • 1.65歳時点の見込額を確認する:「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」を使い、老齢基礎年金と老齢厚生年金の見込額を確認します。
  • 2.開始年齢ごとの額面を比べる:受け取りを遅らせる月数に0.7%を掛け、増額の対象となる年金額に反映します。65歳開始で受け取れる累計額と、希望する年齢から受け取る累計額を比べましょう。
  • 3.生活費と手取りへの影響を点検する:待機中の収入・預貯金、税金・保険料、加給年金額の有無を確認します。65歳開始、基礎年金のみ繰り下げ、両方を繰り下げる場合などを比較すると判断しやすくなります。

年金の改定、税制や保険料、家族構成によって実際の受取額は変わります。具体的な見込額や繰り下げ可能期間は、日本年金機構の「ねんきんネット」や年金事務所で確認してください。

【シミュレーター】額面と手取りの逆転年齢を比べてみよう

みらい犬

額面だけでなく、手取りの見込みも並べると違いが見えそうだワン。税金や保険料は人によって違うから、入力前に確認するワン。

65歳開始と希望する繰り下げ開始年齢について、年金の年額と、税金・社会保険料を差し引いた年額の見込みをそれぞれ入力し、累計が逆転する年齢を比べるためのツールです。手取り額が不明な場合は、額面だけでも比較できます。

年金繰り下げ中の生活費つなぎ資金シミュレーター

65歳時点から受給開始前まで、生活費と年金以外の収入が毎月一定で、貯蓄を生活費に充てる前提の概算です。65歳受給時の年金年額は受給後の参考表示にのみ使用し、待機中の必要資金には含めません。税金・社会保険料、加給年金、物価変動、運用益は考慮せず、損益分岐点を計算するツールではありません。

手取り額はツールが税金・保険料を自動計算したものではなく、入力した見込み額に基づきます。年金改定、加給年金額、在職老齢年金、待機中の資産の取り崩しなどは別途確認してください。比較は判断の参考であり、将来の受取総額を保証するものではありません。

まとめ:損益分岐点と家計の両方を確認しよう

みらい犬

70歳開始なら82歳ごろ、75歳開始なら87歳ごろが額面の目安だワン。僕はまず生活費を確認して、自分に合う受け取り方を落ち着いて考えるワン。

65歳開始と比べた額面の受取総額は、70歳開始なら82歳になる少し前、75歳開始なら87歳になる少し前に逆転する計算です。ただし、これは年金額を一定とし、税金・社会保険料などを除いた目安にすぎません。

繰り下げを考える際は、長生きした場合の年金額だけでなく、受け取り開始までの生活費、手取り、家族に関する加算も確認しましょう。基礎年金と厚生年金を別々に受け取り始める選択肢も含め、家計に無理がないか検討することが大切です。

この記事は2026年10月22日時点の制度を前提とした一般的な解説です。個別の受給要件、制度改正や最新の取扱いは、日本年金機構・厚生労働省の公表情報や年金事務所で確認してください。試算は将来の受取額を保証するものではありません。